『サポート制度』ガイド
がんの治療を支えるために、さまざまなサポート制度が用意されています。制度を賢く着実に活用するためにサポート制度一覧を用意しました。
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医療費が高額で負担を減らしたい
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■ 高額療養費制度
年齢や収入に応じて医療費の上限(自己負担限度額)を設定し、月ごとの超過分が払い戻される制度です。
詳細はこちらをご確認ください。■ 限度額適用認定証
保険証と併せて医療機関等に提示すると、1ヶ月の医療機関等への支払いを一定金額(自己負担限度額)までに抑えることができる認定証です。
詳細はこちらをご確認ください。■ 高額医療費貸付制度
健康保険が高額療養費を支給するまでの間、必要な資金を無利子で貸し付ける制度です。
詳細はこちらをご確認ください。■ 高額医療・高額介護合算療養費制度
医療費と介護サービス費に係る自己負担額がある世帯で、1年間(毎年8月から翌年7月末)の自己負担額の合計額が高額になるときは、申請に基づき、自己負担限度額を超える額が支給される制度です。
詳細はこちらをご確認ください。■ 医療費控除
1年間に一定額を超える医療費を支払った場合に、確定申告の際に税金(所得税)の還付が受けられる制度です。
詳細はこちらをご確認ください。■ ひとり親家庭医療費助成制度
父母の離婚、父または母の死亡などにより、ひとり親家庭となった18歳までの児童及びその児童を監護する父、母または養育者が、健康保険証を使って病院などにかかったときの費用の一部を公費で助成する制度です(自治体により異なる場合がある)。
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収入が減り生活が不安
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■ 生活福祉資金貸付制度
低所得者、高齢者、障害者(身体障害者手帳などの交付を受けた方)が安定した生活を送れるよう、お住まいの地域の市区町村社会福祉協議会が、資金の貸付けと必要な相談や支援を行う制度です。
■ 生活保護制度
生活が困窮している方に対して最低限の生活を保障し、自立を支援する制度です。
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体に障害が出てしまった
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■ 傷病手当金
傷病手当金は、勤務先などで社会保険に加入している方が、肺がん治療による入院、自宅療養などで休業した際に、健康保険加入者とその家族の生活を支えるための給付制度です。
詳細はこちらをご確認ください。■ 障害年金・障害手当金
がんによって仕事や生活が制限されるようになった場合の公的年金・手当です。
詳細はこちらをご確認ください。■ 障害者手帳
身体障害者の自立や社会活動を支援するための公的サービスを受けられる証明書(自治体が交付し、現金支給はない)です。
詳細はこちらをご確認ください。■ 介護保険
介護保険は、病気などにより日常生活において介護が必要な方に対して、必要な給付(介護サービス)を行う制度です。
詳細はこちらをご確認ください。■ 重度心身障害者医療費助成制度
心身に重度の障害がある方に医療費の助成をする制度(都道府県や市町村が実施)です。
■ 介護休業給付金
被保険者の方が対象家族を介護するために介護休業を取得した場合、一定の要件を満たすと支給を受けることができる制度です。
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がん治療と生活全般について相談したい
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■ がん相談支援センター
がん相談支援センターは、全国のがん拠点病院や地域がん診療病院内に設置され、患者さんやご家族、あるいは地域の方々からの、がん治療に関わる全般的な相談を無料で受け付けています(病院により名称が異なる場合がある)。
看護師やソーシャルワーカー、国立がん研究センターで研修を受けた相談員などが対応しています。<主なサービス>
- ・がんの治療法などの一般的な情報の提供
- ・地域の医療機関や診療従事者に関する情報の提供
- ・セカンドオピニオンの提示が可能な医師の紹介
- ・がん患者の療養上の相談
- ・就労に関する相談
- ・患者会や患者サロンの紹介と活動支援
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全国の相談窓口についてはこちらから探すことができます。
国立がん研究センターがん情報サービス「がん情報サービスサポートセンター」
がんに関する心配事や知りたい情報をお電話で相談できます(相談無料)。
また、お近くのがん相談支援センターについての情報提供も行っております。<電話番号> 0570-02-3410(ナビダイヤル)
03-6706-7797<受付時間> 平日10~15時(土日・祝日・年末年始を除く)
■ がん相談ホットライン
<電話番号> 03-3541-7830
<受付時間> 10~18時(祝日・年末年始を除く)
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治療中の子育てのサポートをしてほしい
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■ ファミリー・サポート・センター
ファミリー・サポート・センターは、地域において育児や介護の援助を受けたい人と行いたい人が会員となり、育児や介護について助け合う会員組織です。ファミリー・サポート・センターの設立運営は市区町村が行います。
<主なサービス>
- ・保育所までの送迎を行う
- ・保護者の病気や急用などの場合に、子供を預かる
- ・冠婚葬祭や他の子供の学校行事の際に、子供を預かる
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在宅で医療サービスを受けたい
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■ 在宅療養支援診療所
在宅療養支援診療所とは、病気をかかえているけれど通院ができない方のために、ご自宅で診療が受けられる訪問診療や、24時間・365日体制の往診を提供できる診療所のことです。
■ 保険外支援サービス
介護保険ではカバーできない食事、掃除、買い物、洗濯、その他日常生活を送る上で必要な支援や、病院、散歩、お墓参り、冠婚葬祭など外出するときの手伝いや付き添い、および車などによる移送の支援なども行っています。保険外サービスには、市区町村が実施する支援サービスから民間企業が行うサービスまであり、それぞれ利用方法や費用が異なります。
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アスベスト(石綿)肺がんについて相談したい
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アスベストを原因とする肺がんと診断された患者さんが、補償や救済を受けるための制度をご紹介します。
■ 労災保険制度による補償
アスベストにさらされる作業に従事していた労働者または労災保険の特別加入者がアスベスト肺がんと診断され、かつ厚生労働省が定める労災認定要件の①から⑥(下記)のいずれかに該当する場合は、労災保険制度による労災保険給付の対象となります1)。
なお、労災認定要件は平成24年に最新版に改訂され、肺がんにおける認定基準が一部追加されました(③、⑤、⑥)2)。<労災認定要件>
- ①石綿肺所見※がある
- ※ じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺所見をいいます。
- ②胸膜プラーク所見がある+石綿ばく露作業従事期間10年以上※
- ※ 石綿製品の製造工程における作業については、平成8年以降の従事期間を実際の従事期間の1/2として算定します。
- ③広範囲の胸膜プラーク所見がある※+石綿ばく露作業従事期間1年以上
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※ 広範囲の胸膜プラークとは・・・・
- ◆胸部正面エックス線写真により胸膜プラークと判断できる明らかな陰影が認められ、かつ、胸部CT画像によりその陰影が胸膜プラークとして確認される場合
- ◆胸部CT画像で、胸膜プラークの広がりが胸壁内側の1/4以上ある場合
- ④石綿小体または石綿繊維※の所見+石綿ばく露作業従事期間1年以上
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※ 石綿小体または石綿繊維の所見については、以下のいずれかであることが必要です。
- ◆石綿小体が乾燥肺重量1g当たり5,000本以上ある
- ◆石綿小体が気管支肺胞洗浄液1ml中に5本以上ある
- ◆5μmを超える大きさの石綿繊維が乾燥肺重量1g当たり200万本以上ある
- ◆1μmを超える大きさの石綿繊維が乾燥肺重量1g当たり500万本以上ある
- ◆肺組織切片中に石綿小体または石綿繊維がある
- ⑤びまん性胸膜肥厚に併発
- びまん性胸膜肥厚の認定要件を満たすものに限ります。
- ⑥特定の3作業※1に従事+石綿ばく露作業従事期間※2 5年以上
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※1 「特定の3作業」とは
- ◆石綿紡織製品製造作業
- ◆石綿セメント製品製造作業
- ◆石綿吹付作業
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※2 「従事期間」とは
上記3作業のいずれかに従事した期間、またはそれらを合算した期間をいいます。ただし、平成8年以降の従事期間は、実際の従事期間の1/2として算定します。
*用語解説*
- 石綿肺
- 肺が線維化する病気である「じん肺」のうち、アスベストが原因であるもの4)。
- じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型
- じん肺患者のエックス線写真は、粒状影、不整形陰影、大陰影の有無と数で4つの型に分類される。第1型は、「両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの」とされている5)。
- 胸膜プラーク
- アスベストを吸入することによって壁側胸膜(胸壁を覆う膜)に生じた限局的な線維性の肥厚4,6)。
- 石綿小体
- 肺の中に到達したアスベストが鉄蛋白と結合した物質7)。
- 乾燥肺重量
- 手術や生検で入手した肺組織を乾燥させたもの。労災認定では1g当たりに含まれる石綿小体や石綿繊維の数を測定する7)。
- 気管支肺胞洗浄液
- 気管支鏡を気管支に挿入して生理食塩水を注入し、回収した洗浄液の細胞成分や液性成分を分析し呼吸器疾患を診断する方法6)。
- びまん性胸膜肥厚
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臓側胸膜(肺を覆う膜)の慢性線維性胸膜炎の状態で、壁側胸膜にも病変が及んで両者が癒着していることが多い。胸膜プラークと異なり、アスベスト以外の原因でも生じる。労災保険の補償の対象疾患である4)。
厚生労働省 石綿による疾病の労災認定より改変
<アスベストにさらされる作業>
各作業の詳細については厚生労働省ホームページをご覧ください。■ 労災保険給付の対象とならない方への救済制度
アスベスト肺がんと診断された方でも、アスベストにさらされる作業に従事したことがない方や、労災保険の特別加入者でない方は労災保険給付の対象とはなりません3)。
そこで、政府は平成18年に石綿健康被害救済制度を制定し、労災保険給付の対象外であるアスベスト健康被害者も医療費や療養手当の給付を受けられるようにしました4)。■ 労災保険制度による労災保険給付3)
相談先:各都道府県の労働基準監督署
<電話番号>0570-006031(労災保険相談ダイヤル)
<受付時間>8:30~17:15(土・日・祝日・年末年始は除く)■ 石綿健康被害救済制度による救済給付3)
相談先:独立行政法人環境再生保全機構
<電話番号>0120-389-931(アスベスト救済相談ダイヤル)
<受付時間>10:00~17:00(土・日・祝日・12/29~1/3を除く)- ※上記のほか、最寄りの保健所でも相談・申請を受け付けています。
- 1)厚生労働省 石綿による疾病の労災認定
- 2)厚生労働省 石綿による疾病の労災認定基準を改正
- 3)厚生労働省 石綿健康被害救済制度、労災補償制度のご案内(その病気、その症状は石綿が原因かもしれません)
- 4)独立行政法人環境再生保全機構 石綿健康被害救済制度
- 5)労働法ナビ じん肺法
- 6)独立行政法人環境再生保全機構 石綿と健康被害
- 7)環境省「石綿による健康被害に係る医学的判断に関する考え方」報告書