専門家に尋ねる『サポート制度』
障害者手帳
正式には「身体障害者手帳」といい、手帳を提示することで、身体に障害のある方の生活を支援する公的サービスを受けることができます。障害年金や障害手当金と違って現金が支給されることはありませんが、想像以上に多様なサービスが受けられるので、可能であれば取得しておくことをおすすめします。
監修:近藤明美先生
近藤社会保険労務士事務所/特定社会保険労務士 キャリアコンサルタント。
(社)CSRプロジェクト(Cancer Survivors Recruiting)にも参画し、長年にわたって、がん経験者の就労相談に取り組んでいる。
障害を持つ方の経済的・物理的負担を軽減
障害者手帳は、身体障害のある方の自立や社会活動の参加を促すなどの支援を目的として設けられました。公的な身体障害者向け福祉サービスを受ける際に必要となる「証明書」として、都道府県や政令指定都市・中核市などの自治体が交付します。
手帳の対象となるのは、次の障害です。
・視覚障害
・聴覚障害
・平衡機能障害
・音声・言語機能障害
・そしゃく機能障害
・肢体不自由
・心臓機能障害
・じん臓機能障害
・呼吸器機能障害
・ぼうこう又は直腸機能障害
・小腸機能障害
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
・肝臓機能障害
肺がんの患者さんの場合、「呼吸器機能障害」の障害等級に該当すると手帳を取得することができます。
手帳の交付対象となる障害の範囲は、障害の程度や日常生活への影響などを考慮して、1級から7級までの区分が設けられています。1級から6級までに該当すると手帳が交付され、7級の場合は、障害が2つ以上重複した場合に対象となります。
手帳の取得でさまざまなサービスが受けられる
障害者手帳を取得することで受けられるサービスには、さまざまなものがあります。障害者手帳の等級、お住まいの地域により異なるので、利用時には自治体の障害福祉窓口まで問い合わせて確認しましょう。
【税金の負担軽減】
- ・所得税・住民税・相続税などの軽減
- ・自動車税・自動車取得税の減免
【公共サービスの割引等】
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- ・公共施設利用料の割引
- ・バス・鉄道・タクシーなど各種交通機関の運賃割引
- ・高速道路・有料道路の通行料の割引
- ・駐車禁止除外標章の交付
- ・携帯電話の基本料金や通話料金等の割引
- ・公営住宅の優先入居
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【医療費等の助成】
- ・医療費の助成
- ・車いすや補聴器などの補装具の支給
近年では、民間企業においても障害者手帳を持つ方にさまざまなサービスを提供するところも増えてきました。観光施設や、映画館や美術館といった施設での割引などです。いずれも障害をもちながら積極的に外出を楽しみ、社会と関わることを支援する意図があります。
企業の「障害者採用枠」に応募できる
障害者雇用促進法で、社員の2%に相当する障害者を雇用することが、企業には義務付けられています。障害者手帳を持つ方は、障害者採用求人に応募することができます。
申請から約1ヵ月で交付。永続的な取得が可能
申請は市区町村の障害福祉窓口に行います。身体障害者診断書・意見書の書式をもらい、身体障害者福祉法第15条の指定を受けている医師に作成してもらいます。
その「身体障害者診断書・意見書」の他に、「交付申請書」や申請者の写真、印鑑、個人番号カードもしくは通知カード、身分証明書を揃えて、窓口に提出します。
基本的には有効期限は設けられておらず、半永続的に利用が可能です。ただし、障害の状態が変わったり、障害がなくなった場合には、本人からの自己申請で「等級変更」や「返還」の手続きをすることになります。また、将来、障害の程度に変化が予想される場合は、再認定の期日を指定されることもあり、その場合は指定された期日(1〜5年以内)までに改めて診査を受ける必要があります。
2019年4月掲載