検診
肺がん検診:検査内容、頻度
40歳を過ぎたら肺がん検診
がん検診の目的は、がんを発見することですが、単に「がんを見つける」ことだけでなく、「早期に発見し、適切な治療をすることでがんによって亡くなる方を減らす」ことです。総合的にみて、検診を受けるメリットがデメリットを上回るように、がん検診の項目が定められています。
肺がんの場合は、40歳を過ぎたら、男女ともに年に1回、検診を受けることが望ましいとされています。この検診対象年齢と頻度は、厚生労働省が「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」で、科学的根拠に基づいて定めているものです。
胸部X線検査、喫煙者では喀痰検査も
肺がん検診では、胸部X線検査(レントゲン検査)を行います。これは、肺全体のレントゲン画像を撮る方法です。タバコをたくさん吸うなど肺がんになるリスクの高い人は、レントゲン検査に加えて、喀痰細胞診を行います。
喀痰細胞診とは、痰を採取して、痰に混じっているがん細胞があるかどうかを顕微鏡で観察する方法です。喫煙者に多いとされる、気管支の太い部分にできる扁平上皮癌は、この検査で見つかる可能性があります。喀痰細胞診の検査対象となるのは、50歳以上で、喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人と定められています。現在たばこを吸っている人だけでなく、過去にたばこを吸っていた人も対象となります。喀痰細胞診は、必ずレントゲン検査と一緒に行われます。
一般的な肺がん一次検診の内容
検診内容 | 問診 | 現在の病状、既往歴、家族歴、過去の検診の受診状況等 |
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検査 | 胸部X線検査(レントゲン検査) | |
喀痰細胞診 ※50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人が対象 |
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頻度 | 年1回 | |
対象年齢 | 40歳以上 | |
受診場所 | 地方自治体(都道府県、市区町村)、保健所 | |
検診費用 |
自己負担額は市区町村による住民健診、職場での検診などによって異なります。 市区町村が実施しているがん検診には、検診費用の補助があります。 各自治体の検診を受ける方は、お住まいの自治体にお問い合わせください。 |
肺がん検診の流れ
精密検査が必要と言われたら?
肺がん検診で、「がんの疑いがあります」「精密検査を受けてください」などと言われた場合は、そのまま放置せずに、なるべく早く医療機関で精密検査(さらに詳しく行う検査)を受けましょう。
精密検査では、胸部CT検査や、気管支鏡検査などを行います。気管支鏡検査とは、口から気管支に内視鏡を入れて、がんができている可能性のある部位を直接観察する方法です。必要に応じて、その部位の細胞を採取して、悪性の腫瘍かどうかを診断します。
精密検査の方法は、「がんができているかもしれない場所」や、「できているものが悪性の可能性が高いかどうか」など、ひとりひとりの状態によって決められます。
低線量肺がんCT検診について
肺がん検診では、胸部CT検査をすることもあります。現在広く行われている、胸部X線検査、または胸部X線検査+喀痰細胞診の肺がん検診は、早期の小さながんまで見つけることが難しいという現状があるため、人間ドックなどの任意型検診として、CTによる肺がん検診の取組が活発化しています。
一般診療で用いるCT検査は放射線被ばくのリスクが知られていますが、肺がん検診の場合は一般診療よりも格段に低い線量で撮影してもその目的を達成できるため、「低線量CT」を用いて被ばくリスクを最小限にしたほうが良いと考えられています。
低線量肺がんCT検診では、従来の胸部X線検診による写真と比べ、より小さく、より早い時期の肺がんを発見できます。その発見率は約10倍高まるとも言われています。その一方で、本当は肺がんではないのに疑わしい影が見つかる(偽陽性)こともあり、結果的に不要ないくつもの精密検査を受けることになる、というような金銭的、精神的、もしくは時間的損害をこうむる可能性もあります。こうした利益と不利益の双方を知ったうえで、検診を受けることが大切です。
監修:日本医科大学 呼吸器内科
臨床教授 笠原寿郎先生
2022年12月掲載