検査法
内視鏡検査:気管支鏡と胸腔鏡
気管支鏡とは
気管支鏡とは直径6mm程度のファイバーを鼻あるいは口から挿入し、先端のカメラで気管支の内部を観察したり、肺の組織を採取したりする検査です。かつては全身麻酔で水道管のような太いチューブを使っていましたが(硬性気管支鏡といいます)、日本の池田茂人氏によって気管支ファイバーが開発され、患者さんの負担が著しく軽減され、現在は局所麻酔で行われるようになりました。なお、硬性気管支鏡は検査の目的によっては今でも使われています。
気管支鏡を使った検査は、肺がんだけでなく、肺のさまざまな病気の検査としておこなわれています。気管支の粘膜や気管支がふさがっていないかどうかの観察、病巣の一部を採取、気管支内の異物除去、レーザー照射の治療にも用いられています。
ファイバーを挿入する口あるいは鼻に局所麻酔をかけた後、ファイバーをゆっくりと挿入し、気管や気管支内に局所麻酔液を散布しながら、ファイバーを気管支の奥に進めます。局所麻酔液を散布するのは、咳や異物感を軽くするためです。
気管支鏡検査は、気管支内部の観察だけであれば5分から10分で終了します。
病巣が直接確認できた場合、あるいはX線透視で病巣が確認された場合は、その部分の組織を擦過(擦り取ること)あるいは組織の一部を採取します。組織を採取しても痛みはありません。組織採取時の危険性としては出血があります。通常は10分程度で出血は収まりますが、稀に出血で入院等が必要となることも報告されています。
なお最近では、気管支鏡にカメラだけでなく超音波装置を備え(EBUS)、組織を採取する針のついた装置も開発されており、今までできなかった場所から検体が採取できるようになっています。
口あるいは鼻に局所麻酔を噴霧した後、ファイバーをゆっくりと挿入
気管支鏡の観察写真
手術も可能な胸腔鏡
肺の組織が収まっている胸腔というところに内視鏡を挿入し、組織採取や手術を行うものです。胸腔の中に内視鏡を入れておこなう検査を胸腔鏡検査といいます。胸腔鏡検査は気管支鏡検査で診断がつかないときにおこなわれることがあります。全身麻酔をかけておこなう手術の一種と考えたほうがよいでしょう。
通常は皮膚3箇所を1cmくらい切開し、1箇所からカメラを、他の2 箇所からメスや鉗子などの手術具を挿入して処置や検査、手術をおこないます。通常の大きく胸を切開して行う手術に比べると、切開する傷が小さいので、患者さんの体の負担は少なくてすみます。
その一方で、カメラの画像を見ながらの処置・手術となるため術視野が狭く、立体感が乏しいことから、手技は難しくなります。したがって、胸腔鏡の処置・手術中に何か危険が発生した場合に、通常の胸部手術に切り替えて、胸を大きく切開することもあります。
最近では胸水の検査目的などで胸腔鏡を、局所麻酔をかけて行うこともあります。ただしその場合は、肺の一部を切除するような大きな処置は行わないのが普通です。
監修:日本医科大学 呼吸器内科
臨床教授 笠原寿郎先生
2022年12月掲載