肺がん患者会 - 座談会 - 2024年10月開催(東京)
1.肺がん患者会とは?
※ 所属・情報については、座談会実施時の情報です。
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どうして肺がん患者会を立ち上げたのか?
司川上:なぜ患者会を立ち上げたのか教えてください。
代長谷川:僕は2010年に肺がんに罹患しました。当時、いくら探しても肺がんの患者会はなく、あってもホームページの掲示板だけでした。その掲示板も主催者が亡くなるとともに閉鎖され、そこに書き込まれていた皆の大切な感情や経験、出会う場が一瞬にして消えるという経験をしました。貴重な体験をお互いにシェアする場や出会う場を作るために、2015年に「肺がん患者の会ワンステップ」を立ち上げました。
代三宅:私は2012年に肺がんと告知されました。周りにがん患者さんがおらず、毎日泣いてばかりでしたが、ネットのブログで婦人科系のがん患者さんと交流するようになったことをきっかけに、肺がん患者さんとリアルに会えるようになりました。初めて会ったとき、家族以上かもしれないと思うくらい一緒にいて心地がよく、落ち込みから這い上がるきっかけをもらいました。大阪とその近辺にお住まいの肺がん患者さんにも笑顔になっていただきたいと思い、まずは「Hi!女子会」をつくりました。その後、男性患者さんも入れる患者会として「Hi!フレンズ」を2019年に立ち上げ、JLCA(日本肺がん患者連絡会;16団体が参加)にも参画しています。
代野村:肺がんになったのは2016年です。当時は外資系企業で海外勤務をしていたのですが、肺がんに罹患した後は解雇されました。その頃、長谷川さんが中心となって名古屋で患者会のイベントが開催され、参加しました。イベント終了時に参加者でお話をした時、「愛知にも患者会があったほうがいいね」との声があり、その時、肺がん患者会を立ち上げられないかなと思いました。つらい時期にいろいろな人に助けられたので、人生の終わりに向けて少しは人の役に立つことができればという想いから「肺がん患者の会ワンステップ」の東海支部を立ち上げました。1年ほどたって地盤ができたので「肺がん患者会ワンステップしゃちほこ」として独立しました。
代長谷川:病院の先生方も参加するのは「肺がん患者会ワンステップしゃちほこ」の特徴ですよね。
代野村:名古屋の有名な呼吸器内科である先生に協力をいただけたおかげです。飛び込み営業のように会いに行った僕によく会ってくれたなと思いますが、患者会の話をしたら「わかった」と言ってくださいました。その先生は当時、中日本呼吸器臨床研究機構の理事長だったこともあってか、先生から紹介を頂くとどの病院の先生も快くご協力を頂けました。
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司川上:医療者も「肺がんの患者会が全然ない」と思っていたから、うれしくて、全力で応援しようと思ったのではないですか。患者側にとっても、医療者も関わってくれたり、拠点病院でおこなわれていたりすると安心感がありますよね。
肺がん患者会の目的は?
司川上:肺がん患者会の目的を教えてください。
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代長谷川:命の限りを告げられたものにとって「どうやって自分の人生を満足するものにするか」という最大の問いがあります。それを考えていくことが目的です。僕だけではなくて、患者・家族全員が最終的にたどり着くのはここだと思っています。でも、それを考えて行動していくのは自分一人ではさみしいし、仲間がいるとうれしいなと思います。仲間がいないと進めないですよ(笑)。
代三宅:「Hi!フレンズ」の目的は、肺がんに罹った人が少しでも笑顔になって、今までの自分を取り戻すことです。同じ肺がんの患者さんと会うことによって私も元気をもらえます。また、医師にも看護師にも薬剤師にもできない役割が患者にはあると思っています。私が行っている病院には相談支援センターがありますが、看護師といくら話しても気分が上がってこない人もいます。そのような患者さんでも、仲間と話すことによって、すごく元気になってくれることもあり、それは私にとって大変うれしいことです。
代野村:「肺がん患者会ワンステップしゃちほこ」の目的は、患者がその人らしく過ごせるように、少しだけでも何か一緒にできたらいいなということです。その「少しだけ」というのが、患者同士でしかできないことと地元の医師や看護師などの支援を受けてできることがありますので、患者と医療者が一緒になって活動することが大切と思っています。ただ、僕は人のためというよりも、好きでやっていますね。
肺がん患者会の具体的な活動は?
司川上:肺がん患者会では具体的にどのような活動をしているのでしょうか。
代長谷川:「肺がん患者の会ワンステップ」では、皆で集まってワイワイとたわいもないことをおしゃべりするわかち合いの場と、悩み相談の場が活動の大きな柱です。おしゃべり会は、患者向けを月に1回オンラインでやっていて、年に3~4回は対面の機会を設けています。家族向け、遺族向けの時もあります。活動場所は基本的に首都圏(神奈川か東京)ですが、2024年からは別の地域に出かけていって開催する取り組みを始めました。また、肺がん治療は日進月歩なので、それをキャッチアップして治療に向き合うことを目的としたセミナーもおこなっています。
代三宅:「Hi!フレンズ」では、おしゃべり会を対面で年に3~4回と、オンラインで年に2~3回やっています。新型コロナウイルス感染症が流行する前は大阪周辺の関西圏の人たちが集まっていたのが、流行中にオンラインでおこなうようになって、さまざまな地域から参加してくださるようになったので、オンラインも続けています。たまにお花見や伊勢神宮へのお参りなどのお出かけイベントも実施しています。
代野村:「肺がん患者会ワンステップしゃちほこ」では、対面の患者会は年に4回ぐらい、がん拠点病院や貸会議室でおこなっています。がん拠点病院でおこなう場合は医師や看護師が参加しますが、どうしても医師中心の話になってしまう傾向があるので、医師が抜けた後に患者だけで話す時間を設けるときもあります。それとは別に、勉強会をオンラインでも実施しており、それには全国から参加していただいています。さらに、公式な会とは別に「ちょっと一緒にお茶しようか」という形で、患者さん一人ひとりに合わせた向き合い方をすることもあります。あまり堅苦しくせずに柔軟に、できる範囲で対応しています。
2025年2月掲載