アピアランスケアの考え方

がん治療中の外見変化にどう対応するのか

近年、急速な医療技術の進歩で、がんの治療中であってもこれまでどおり通学・通勤するなど、日常生活を送ることができるようになりました。その背景には、入院期間の短縮、通院治療環境の整備、治療効果の改善や治療中・治療後の副作用の軽減などによって、患者さんの負荷が軽減したことがあります。
その半面、いつまでも健康で若々しく、豊かに生活することを望む一般社会において、治療中・治療後の外見変化に悩み、「苦痛」として訴える患者さんは少なくありません。
そのような悩みに応えるために、がん治療中の外見変化に対する考え方や具体的な対処方法・工夫について、国立がん研究センター中央病院 アピアランス支援センター長である野澤桂子先生にお話しいただきました。

■治療による外見の変化は、なぜ気になるのか?

  • ・脱毛などの外見にあらわれる症状に、多くの患者さんが、強い苦痛を感じています
  • ・外見の変化によって、これまでどおりの対等な人間関係でいられなくなってしまう。そこに不安を感じています

■外見変化にどう対応するか?(アピアランスケアの実際)

  • ・これから治療を開始するにあたり、脱毛や皮膚障害、体重増減など外見変化について不安を感じている方へ
  • ・職場復帰を控え、治療後の外見変化に悩んでいる方へ
  • ・治療中の日常スキンケアは、とても大切です。「清潔に保つ」「保湿する」「保護する」を実行しましょう
  • ・ウィッグ選択時は、あまり細部にこだわらず、最も自分らしく似合うと思うものを、自分で決めましょう

■外見変化の悩みをどこに相談するか?

  • ・施設によって取り組みはさまざま。まずは、各病院の相談支援センターへご相談ください
  • ・がん治療による外見変化に対する支援が、がん対策推進基本計画にも盛り込まれ、充実が望まれています
  • ・他の医療施設・医療者にもアピアランスケアによる支援の輪を広げています

■がん治療中の患者さんへ

  • ・がん治療は、この先も「生きる」ための手段です。治療のときだけ“パートタイマー患者”でいてください

立教大学法学部卒業。夫の仕事でフランス滞在中、患者のQOL向上のために外見の問題が重視されている医療現場に関心をもつ。帰国後、臨床心理士資格取得。「外見と心理」をテーマに目白大学大学院 心理学研究科博士課程を修了し博士号取得(心理学)。山野美容芸術短期大学 美容福祉学科教授を経て2013年より現職。2016年には研究班として医療者向け「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」を発行し、患者相談・研究とともに医療者への教育・普及に取り組んでいる。

野澤 桂子先生 (臨床心理士)
野澤 桂子先生 (臨床心理士)
国立がん研究センター中央病院 アピアランス支援センター長