放射線治療

肺に照射する放射線療法

早期非小細胞肺がんでの放射線治療

がん細胞に放射線を照射して、がんを死滅させる治療法です。何らかの原因で手術をおこなわない場合、早期の非小細胞肺がんには、放射線治療による単独治療が薦められています。

また、CT、コンピューターの進歩により、心臓などの周りの臓器に影響を与えずより安全に治療をおこなうための照射法(3D-CRT)が推奨されています。

III期非小細胞肺がんでの放射線治療

III期の多くは手術ができないので、化学療法(抗がん剤)が可能な場合は放射線療法との併用(化学放射線療法)を、化学療法の治療が難しい場合は放射線治療単独での治療が推奨されています。

III期の場合でも胸水がたまっているようなときは、放射線照射は第1選択にはなりません(症状をやわらげるための放射線治療は考慮されます)。

放射線単独で治療する場合、通常分割照射法(1日1回、月曜から金曜までの週5回)で、少なくとも合計60Gy(30回)の照射をおこなうように推奨されています。

III期非小細胞肺がんでの化学放射線療法と免疫療法

化学放射線療法は、放射線治療と抗がん剤による化学療法を組み合わせておこなう治療方法です。
IIIA期の非小細胞肺がんのうち、「手術で完全にがん病巣をとり除くことができ、体力的に手術が可能」と判断された場合は、手術が選択され、術後に化学療法、または化学放射線療法がおこなわれます。術前にこれらの治療をおこなう場合もあります。
IIIA期の非小細胞肺がんのうち、縦隔のリンパ節に転移がある場合や手術で完全にがん病巣をとり除くことが不可能な場合および体力的に手術に耐えられないと判断された場合と、IIIB/C期の非小細胞肺がんで化学放射線療法の適応と判断された場合には、化学放射線療法が治療の第一選択になります。
また化学放射線療法後に免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法をおこなうこともあります。

III期非小細胞肺がんでの化学放射線療法と免疫療法

限局型小細胞肺がんで用いられる放射線治療

限局型の小細胞肺がんと診断され、手術よりも他の治療法が適していると判断された場合の標準治療は、化学療法(抗がん剤)と放射線治療の併用(化学放射線療法)です。

胸部放射線治療

小細胞肺がんの速い進行を抑えるため、「加速過分割照射法(45Gy/30回/3週)」が第一選択です。この方法では約3週間、1日2回の頻度で放射線を照射します。ただし、体の状態やがんの場所などで放射線治療の副作用が懸念される場合には、1日1回の治療を約6週間続ける「定位放射線治療」がおこなわれることもあります。

予防的全脳照射(PCI)

小細胞肺がんは比較的脳へ転移しやすいという特徴があります。限局型小細胞肺がんで、最初の治療で効果が十分に得られた患者さんを対象に、予防的に脳全体へ放射線を照射する治療が推奨されています。この治療は、脳への転移を防ぐことを目的としており、予防的全脳照射(PCI:ピーシーアイ )と呼びます。

この治療で十分な脳転移予防効果を得るためには、薬物療法や化学放射線療法で良好な治療効果が確認されてからできるだけ早期(治療開始から6カ月以内)におこなうことが望ましいとされています。
予防的全脳照射は1回あたりの線量が2.5Gyの照射を10回相当用いることが勧められています。治療期間は約2週間です。(医療施設により異なる場合があります。)

なお、進展型小細胞肺がんの患者さんに対しては、予防的全脳照射による効果が確認されていないため、現在推奨されていません。

参考:
・日本肺癌学会編:肺癌診療ガイドライン2021年版, 金原出版株式会社
・日本肺癌学会編:患者さんのための肺がんガイドブック2021年版, 金原出版株式会社

監修:日本医科大学 呼吸器内科
 臨床教授 笠原寿郎先生