手術療法

手術の範囲は?

標準的な手術:肺の房(肺葉)を切り離す

肺は右が三つ、左が二つの肺葉に分かれています。ぶどうの房が太いつるに右に三つ、左に二つぶら下がっているのを想像してください。それぞれの房には気管支と血管が入り込んでいます。
この房のうちどこかにがんが発生したとき、房を単位として切り離すのが標準的です。

一番多く行われているのが房の一つを切り離す「肺葉切除」。
右肺の場合は上葉と中葉、中葉と下葉という二つの房をあわせて切り離す2葉切除が行われることもあります。
がんが房の根元付近にまで食い込んでいると、右あるいは左の全部の房を取り除く必要がでてくることがあります。
片肺全摘出術です。

全摘出は手術後の肺活量の低下が大きく、身体への負担も大きいので、そうするべきかどうかの判断は慎重になります。

標準的な手術:肺の房(肺葉)を切り離す

リンパ節の郭清:がん細胞を残さないためにリンパ節をとる

肺の房(肺葉)を切り取っただけではがん細胞を全て取りきれたかはわかりません。
がん細胞はリンパ節を好みますので、肺門部や縦隔にあるリンパ節にがん細胞が残っている可能性があるからです。
残った肺を少し脇にどけて肺門部と縦隔のリンパ節を取り除きます。
取り除いたリンパ節は病理検査にまわされて、がん細胞の有無が検査されます。

リンパ節の郭清:がん細胞を残さないためにリンパ節をとる

気管支形成術:できるだけ肺を残すために気管支をつなげる

肺の房(肺葉)の根元のところに病巣があった場合、普通に手術をすると片側全部の肺を取ってしまうことになります。
そこで片肺全摘出はできるだけ避けるために、イラストのように根元の気管支の一部分だけを切り取って残りをつなぐことがあります。
技術的には複雑になりますが、肺の機能低下を少なくできます。

気管支形成術:できるだけ肺を残すために気管支をつなげる

拡大手術:隣り合う臓器を一緒に切除

肺がんが周囲の組織に食い込んでいる(「浸潤(しんじゅん)」といいます)場合に、これらの組織の一部を一緒に切除することがあります。
胸膜、心膜、肋骨などへの浸潤が代表的な場合ですが、ときには大動脈、横隔膜を一緒に切除することもあります。
ただし、身体への負担も大きいため、慎重な判断に基づき、決定されます。

監修:日本医科大学 呼吸器内科
 臨床教授 笠原寿郎先生