自分でできる副作用の対処法と工夫
副作用がおこったとき、医師や薬剤師の指導のもと、対処、工夫することで症状が改善する場合もあります。
下記の一覧から各副作用をクリックすると、ご自分でできる対処法や実際に患者さんがおこなった工夫を参照いただけます。
症状が辛い場合や続く場合は、がまんせずに病院に連絡しましょう。
【吐き気・嘔吐(おうと)】
ムカムカする、吐きそう、などの症状が現れることがあります。
吐き気止めが処方されている場合は、指示通りに服用しましょう。吐き気を感じたら、冷たい水でうがいをするとよいでしょう。食事は無理せずに食べられるものを少しずつ食べるようにしましょう。
吐き気や嘔吐が長く続くときや、食事や水分がほとんどとれない状態が続くときは、点滴によって水分や栄養補給をする方法もありますので、がまんせずに病院に連絡してください。
<体験した患者さんの工夫>
- ・吐き気が強く出た食べ物は仕事のある日にはさけるようにしました。
- ・吐き気止めのお薬を飲んで予防しました。においで吐き気が出そうなときはマスクを着けました。
(※個人の体験であることにご留意ください)
治療の影響で食事がとりづらくなることがあります。
『がん治療中の食事サポートブック2020』(公益財団法人がん研究振興財団)などを参考に食べられるものを探してみましょう。
【口内炎】
口内炎ができて、痛みが出たり、食べ物がしみたりすることがあります。
ふだんから口の中を清潔にするよう心がけましょう。こまめなうがいは、乾燥や感染の予防になります。粘膜を刺激しないように、食事ではかたいものや、熱いもの、香辛料などの刺激物は避けましょう。
症状がひどいようであれば、炎症を抑えるうがい薬や塗り薬、痛み止めを処方してもらう、という方法もあります。
<体験した患者さんの工夫>
- ・食べやすくするためにやわらかく煮込んだり、とろみをつけたりしました。
- ・歯ブラシを使うと吐き気が出るときには、ぬるま湯を使って、ぶくぶくうがいをして口の中を清潔に保つようにしました。
(※個人の体験であることにご留意ください)
治療の影響で食事がとりづらくなることがあります。
『がん治療中の食事サポートブック2020』(公益財団法人がん研究振興財団)などを参考に食べられるものを探してみましょう。
【下痢】
腸の粘膜が荒れて炎症を起こしたり、感染が起こったりすることで下痢になることがあります。
あらかじめ、下痢止めのお薬が処方されている場合は、医師等の指示に従って服用してください。また、ふだんから、消化のよい食事と十分な水分補給を心がけましょう。
めまい、ふらつきなどの脱水症状がある場合や下痢症状が3~4日続く場合、1日4~6回以上の激しい下痢がある場合は病院に連絡しましょう。
<体験した患者さんの工夫>
- ・おなかを温めてみたり、下着や服を汚さないようにお尻に生理用品をあてたりしました。
- ・トイレに行きたくなったら、がまんしないようにしました。職場には、出勤時や勤務中にトイレに立つことがある旨を話し、理解してもらいました。
(※個人の体験であることにご留意ください)
治療の影響で食事がとりづらくなることがあります。
『がん治療中の食事サポートブック2020』(公益財団法人がん研究振興財団)などを参考に食べられるものを探してみましょう。
【便秘】
腸の動きが弱くなったり、食事の量が減ったりすることなどによって便秘になることがあります。水分や食物繊維、ヨーグルトなどを意識してとり、無理のない範囲で体を動かすようにしましょう。症状がつらい場合は下剤を処方してもらうという方法もありますので、3日以上便秘が続く場合は、病院に連絡しましょう。
治療の影響で食事がとりづらくなることがあります。
『がん治療中の食事サポートブック2020』(公益財団法人がん研究振興財団)などを参考に食べられるものを探してみましょう。
【全身倦怠感】
疲れやすい、気力が出ないなどの症状が現れ、いつも通りの生活が送りづらいと感じることがあります。倦怠感そのものに対する有効な治療法は十分に確立されていないため、だるさの原因になりうる、貧血や不安、不眠などに対する治療をおこないます。また、体を動かすことでだるさが軽くなることがあります。
仕事や家事は無理のない範囲でおこない、調子の悪いときは十分に休養をとるようにしましょう。
<体験した患者さんの工夫>
- ・勤務中も疲れたら無理をせずに、途中でも仕事を中断して帰宅させてもらうようにしました。
(※個人の体験であることにご留意ください)
【末梢神経障害(手足のしびれ)】
指先、足先にしびれやピリピリとした違和感が出たり、感覚が鈍くなったりすることがあります。末梢神経障害に有効な予防法や治療法は十分に確立されていませんが、入浴中にマッサージをおこなったり、手のひらや足の指を閉じたり開いたりするなど、血行を良くすることでしびれが悪化しにくくなるといわれています。手足の感覚が鈍くなるのでやけどやケガに注意しましょう。
しびれをやわらげるための治療をおこなったり、症状の程度によっては今使用している薬の量を調節したりすることもありますので、症状が強い場合は主治医に相談してみましょう。
<体験した患者さんの工夫>
- ・手足と足先が冷えるとひどくなる気がするので、お風呂で必ず湯船に浸かり、温めると少し楽になる気がします。ずっとそれを続けています。
- ・細かな作業、例えば、書類をめくる、包装する、ものをつまむなどがスムーズにできなくなったので、指に滑り止めをつけ、焦らず落ち着いて作業しました。
(※個人の体験であることにご留意ください)
【脱毛】
毛の根元にある細胞が薬剤の影響を受けると脱毛が起こります。頭皮にかゆみや痛みを感じる人もいます。また、髪の毛だけではなく、まゆげ、まつげなどの体毛が抜けることもあります。
直射日光や乾燥に気をつけ、髪を洗うときも地肌を強くこすらないようにし、すすぎはぬるま湯で流すなど、刺激を与えないようにしましょう。
事前にやわらかい素材の帽子やナイトキャップを用意しておきましょう。髪の毛をあらかじめ短めにしておくと、脱毛が起きたときに処理しやすくなります。
脱毛は治療の一時的な副作用であり、多くの場合、治療が終われば再び生え始めます。
<体験した患者さんの工夫>
- ・髪を洗うときには、爪を立てずにやさしく洗うように心がけていました。
- ・ウイッグ(かつら)を使っていましたが、自分に似合う、着けていて素敵に思えるものを、実際に試着して選びました。
(※個人の体験であることにご留意ください)
【食道炎】
食道に隣接するリンパ節に放射線が照射されると、食道の粘膜に炎症が起こりやすくなり、胸焼けや食べ物がのどにつかえる、食道がチクチク痛むなどの症状が現れることがあります。
よくかんでゆっくり飲み込み、かたいものや大きいものなどの飲み込みづらいもの、刺激が強い食べ物は避けましょう。症状がつらいときは粘膜保護剤や、痛み止めを処方してもらうという手もありますので、主治医に相談しましょう。
治療が終わると症状は徐々に改善する場合が多いです。
【皮膚障害】
皮膚や爪の変色、発疹やかゆみ、皮膚の乾燥などが起こることがあります。また、放射線を当てた部分の皮膚が日焼けしたように赤くなることがあります。
初めて抗がん剤を投与した後に発疹やかゆみが生じた場合は、アレルギー症状の可能性もありますので主治医に相談しましょう。
こすったり、掻いたりして皮膚を傷つけないこと、清潔にすること、保湿することが大切です。入浴はぬるめのお湯で刺激の少ない石けんを用いて短時間に留め、ゴシゴシ洗いすぎないようにします。市販の保湿剤を用いる場合は、皮膚に刺激になる尿素や乳酸が入っていない保湿剤を選びましょう。
<体験した患者さんの工夫>
- ・保湿を心がけています。爪や手先に炎症を起こし水仕事などがつらいので、マイ手袋を用意し、洗剤などに触れないようにしました。水仕事や重たいものを運ぶ時などが本当につらい時は、同僚に伝え代わってもらいました。
(※個人の体験であることにご留意ください)
参考:
・国立がん研究センターがん情報サービス 「患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版」
・患者さんのためのがん治療による症状で困ったときの職場での対応ヒント集(がん体験者の工夫に学ぶ)第1版
・厚生労働科学研究費補助金 がん対策推進総合研究事業 働くがん患者の職場復帰支援に関する研究(H26- がん政策ー一般ー018)
・がん患者の就労継続及び職場復帰に資する研究(H29- がん対策ー一般ー011)
・国立がん研究センターがん情報サービス「さまざまな症状への対応」
・渡辺 俊一ほか:国立がん研究センターの肺がんの本. 2018, 小学館
監修:日本医科大学 呼吸器内科
臨床教授 笠原寿郎先生
2021年6月掲載