肺がんにおける経過観察の考え方

肺がんにおける経過観察が必要なケースと期間

経過観察とは、治療が必要かどうかを見極めるため、あるいは治療が終わった後に、遅れて出てくる副作用や、がんの再発・進行、新しいがんの発症がないかを定期的にチェックすることです。

肺がん治療で経過観察がおこなわれるケースには、精密検査をおこなったが肺がんかどうか確定できなかったとき、画像検査で影が見つかったが問題ないと判断されたとき、手術や放射線治療、薬物療法が終了したときなどがあります。

画像にうつった影の大きさが6mm未満で、小さすぎて肺がんかどうか判定できないときは経過観察となり、12ヵ月後に再度CT検査をおこないます。

画像にうつった影が6〜10mm未満の場合、3ヵ月後に再度CT検査を行います。再検査で影が大きくなっていない場合はその後2年間(必要があればその後も)、定期的に経過観察をおこないます。影が大きくなっている場合は確定診断のための精密検査をおこないます。

肺がんにおける経過観察が必要なケースと期間

画像である程度の大きさの影がみつかったが問題ないと判断されたときでも、時間がたって再度画像検査をしたときに肺がんの所見に変わっていることがあります。そのため、3ヵ月後に再検査し、影が15mm未満の場合はその後数年間、経過観察を行います。

がんが初期のうちに早く治療をしたいと思うのは当然ですが、生検や手術は体への負担が大きく、不要なときに行うとかえって体に悪いため、影が小さいときには経過観察が優先されます。

気管支鏡による生検や胸水穿刺で採取した細胞を使った細胞診断でがん細胞がみつからなかったからといって肺がんでないと確定することはできません。なぜなら、生検や胸水穿刺などで採取した細胞が必ずしもがんのある部位から採取されたものとは限らないからです。この場合、数ヵ月後に精密検査を行い、その結果に応じて、経過観察、治療、無治療のどれかを選びます。

手術や放射線治療または薬物治療が終了した後は、再発や進行を早期にみつけるため5年間は定期的に検診を行います。受診の間隔や検査の内容は、肺がんのタイプや患者さんの状況、医療施設によって異なりますが、治療終了1ヵ月後、3ヵ月後、半年後、1年後以降は年1回、検診を行うことが多いでしょう。

経過観察は、肺がんの再発や進行を早期に発見するためだけでなく、新しく発生したがんの早期発見、治療後しばらくたってから現れる副作用の早期発見、今後も持続する副作用への対処、治療による身体面・精神面への影響の評価のためにも大切です。問題がないからといって、自分の判断で定期検診をやめないようにしましょう。

経過観察期間の受診について

経過観察期間中に行う検査は、病期や実施した治療の内容、効果、後遺症の内容や程度などによって異なりますが、問診、血液検査、尿検査、胸部X線検査を基本とし、必要に応じてCTやMRI、骨シンチグラフィなどを行うことが多いでしょう。定期検診の日でなくても、気になる体調の変化や症状などに気がついたら、積極的に受診しましょう。

監修:日本医科大学 呼吸器内科
 臨床教授 笠原寿郎先生