統計
肺がんの統計と予後-ステージや年齢などによる生存率の違い-
予後とは
病気にかかった患者さんの今後の見通しのことで、病気や治療が進むと、将来、どのような状態になるかを医学的な見地から予測したものです。
「予後がよい(予後良好)」という場合、病気がよくなる可能性が高いことを指し、「予後が悪い(予後不良)」という場合、病気が悪くなる可能性が高いことを指します。
予後という言葉に、“今後生存できる期間”、すなわち余命の意味を込めることもあります。その場合、「予後がよい」とは余命が長い可能性を意味し、「予後が悪い」とは余命が短い可能性を意味します。
肺がんの予後の考え方
肺がんの予後は、5年生存率(正しくは5年相対生存率)に基づいて説明されることが多いでしょう。
5年生存率は、診断または治療開始から5年後に生存している患者さんの割合を示したものです。手術でがんを取り除いた後、5年間を再発なしで経過したら治癒したと考えられることも多いので、5年生存率が予後の指標となります。
2023年現在、肺がんの5年生存率は、非小細胞肺がんが47.5%、小細胞肺がんが11.5%です。病期(ステージ)別の5年生存率は、非小細胞肺がんの場合、Ⅰ期(ステージ1)が82.2%、Ⅱ期(ステージ2)が52.6%、Ⅲ期(ステージ3)が30.4%、Ⅳ期(ステージ4)が9.0%です。一方、小細胞肺がんの場合は、Ⅰ期(ステージ1)が43.2%、Ⅱ期(ステージ2)が28.5%、Ⅲ期(ステージ3)が17.5%、Ⅳ期(ステージ4)が2.2%です。
肺がんの予後は、治療を受けたか否かによって異なり、治療を受けたのであれば、どのような治療を受けたか、いつから治療を開始したかによっても変わります。また、それぞれの患者さんの体力や他の病気を持っているかどうかなど、いろいろな要素に影響されます。肺がんの治療方法は日々進歩しており、それに伴って肺がんの予後もよくなっていくことが期待されます。
参考:
・国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」
肺がんの生存率とは
肺がんと診断されてから、または治療を始めてから一定期間たった時点で生存している患者さんの割合です。
具体的には、多くの肺がん患者さんの治療経過の情報を集計して統計を作成し、そのなかで所定の条件を満たす患者さんの診断または治療開始から「●年時点で生存している確率」を算出したものです。
治療によりがんをすべて取り除いた後、5年を過ぎても再発や転移がなければがんが治った(寛解)と考えるため、便宜上、5年生存率がよく用いられます。ただし、治療後の生存期間が長いがんや早期がんでは5〜10年生存率を、治療後の生存期間が比較的短いと考えられるがんや進行がんでは1〜3年生存率を用いることもあります。
生存率には、実測生存率とネット・サバイバルがあります。
「実測生存率」とは、がん以外の原因で亡くなった場合を含めた生存率です。
「ネット・サバイバル」とは、がんのみが原因で亡くなった場合の生存率です。
がんの統計では、がん以外の原因での死亡の影響を除外する集計方法として、これまでは「相対生存率」が使われてきましたが、近年、国際的に用いられている「ネット・サバイバル」が採用されています。
生存率は、ある集団における一定期間のデータをもとに算出したもので、それをそのまま個人の患者さんに当てはめることはできません。また、肺がん治療は日々進歩しており、数年前の過去のデータと最新の治療による治療成績を比較できないこともあるので参考程度に考えましょう。
病期(ステージ)や年齢などによる生存率の違い
生存率は、年齢や性別、病期(ステージ)などによって変わります。
このため、どのような特徴を持った患者集団の生存率かを確かめることが大切です。
日本人の肺がん患者さんの性別、病期(ステージ)別の5年生存率※は下記のとおりです。
患者さんの特徴 | 生存率 | |
---|---|---|
性別 | 男性 | 40.6% |
女性 | 61.0% | |
病期(ステージ)別 | I期(ステージ1) | 82.2% |
II期(ステージ2) | 52.6% | |
III期(ステージ3) | 30.4 % | |
IV期(ステージ4) | 9.0% |
- ※日本のがん診療連携拠点病院で治療をおこなった非小細胞肺がん患者106,783名を対象として算出
肺がんの5年生存率は男性より女性で高くなっています。その原因として、喫煙(タバコ)習慣の違い、薬物療法の効果の違い、発現する副作用の違い、組織型の違いなどが影響しているのではないかと考えられていますが、詳細はわかっていません。
病期(ステージ)が進むと生存率は下がる傾向にあります。これは、I〜II期(ステージ1〜2)、III期(ステージ3)の一部では手術によってがん細胞をすべて摘出できれば治癒の可能性がありますが、IV期(ステージ4)では手術でがんをすべて取り除くことは難しいためです。
参考:
・国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」
監修:日本医科大学 呼吸器内科
教授 笠原寿郎先生
2022年12月掲載/2025年3月更新