予防
肺がんを予防するには?
禁煙と、他人のたばこの煙を避けることが第一
肺がんを予防するために最も重要なことは、タバコを吸わないことです。喫煙は、肺がんだけでなく、ほかの多くのがんのリスクを高めるものといわれています。タバコを吸わない人は、他人のタバコの煙(受動喫煙)を避けることが大切です。
たばこ以外のリスクと予防方法は
肺がんにかかるリスクを高めるものは、たばこのほかに仕事中に接触・吸入してしまう(職業性曝露)石綿(アスベスト)やクロム粒子、ラドンガス、ディーゼル粒子などがあります。このうちアスベストは胸膜のがんである「中皮腫」の原因物質として有名ですが、肺がんのリスクも高めます。
アスベストは繊維状の天然鉱物で、以前は建物の断熱材や工業製品の材料として広く利用されていました。しかし、アスベストを吸い込むと中皮腫や肺がんを発症するリスクが高まることがわかり、今ではアスベストの使用は全面的に禁止されています。
アスベストを吸引してから肺がんになるまで15〜40年の潜伏期間があります。家や職場の近くにアスベストをあつかう工場があった、あるいはアスベストをあつかう仕事をしていた、家の建材にアスベストが含まれていたなど、生活環境にアスベストが存在していた場合は、1年に1度は、胸部レントゲン撮影等による健康診断を受診されることをおすすめします。肺がんや中皮腫を発症していなければ、その後も定期的に受診し、早期発見につとめましょう。また、アスベストを吸入した経験と喫煙が重なると、肺がんになる危険性が高まることがわかっているので、肺がん予防のためには、やはり禁煙することが重要です。
また、女性ホルモンが肺腺がんの発生と関係している可能性があるという研究報告がありますが、詳しいことはわかっていません。今後、さらなる研究が期待されています。
肺がんの予防策
がんを予防するための生活を心がけましょう
たばこを吸わないことのほかにも、肺がんを含めたがんを予防するための心がけとして、いくつかの方法があります。
お酒は、「絶対にダメ」というものではありませんが、飲み過ぎはよくありません。ほどほどに、節度ある飲酒を心がけましょう。目安として、1日あたり、日本酒なら1合、ビールなら大びん1本、焼酎なら2/3合、ウイスキーならダブル1杯、ワインならボトル1/3本程度が適量とされています。そもそもお酒を飲まない人や飲めない人は、そのまま飲まないことが一番です。
食事について、「これを食べていれば絶対がんにならない」というものは、今のところありません。偏食をせず、さまざまな栄養素をバランスよくとることが大切です。塩分のとり過ぎを避け、1日あたりの塩分摂取量を男性で8g未満、女性で7g未満に抑えることが望ましいといわれています。野菜と果物は不足しないよう、1日350〜400gを目安に、できるだけ毎日とることを心がけましょう。
肥満はよくありませんが、やせすぎもよくありません。肥満度を示すBMI(Body Mass Index:体重(kg)÷身長(m)2)では、中高年期の男性は21〜27、女性は21〜25が標準とされています。この範囲を目安に、適正体重を維持できるといいでしょう。
また、適度な運動習慣をつけることは、がんだけでなくさまざまな病気のリスクを減らし、元気に長生きできることにつながります。積極的に家事をする、買い物や散歩をして、たくさん歩く、趣味として運動を楽しむなど、活動的な生活習慣を心がけましょう。
監修:日本医科大学 呼吸器内科
臨床教授 笠原寿郎先生
2018年12月掲載/2022年6月更新